「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の聴き方が変わる本

七夕です。

先日のブログにも書名を出しましたが「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の聴き方が変わる本(今 拓海、著 文藝春秋)を読みました。

いろいろ勉強にもなるので、オススメの一冊です。

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ジャンピン・ジャック・フラッシュはミック自身なのではないか

私は以前、「ブライアンとミック・ジャガー」というシリーズを12回に渡って書きました。

順を追って書いていって、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」が出てきたとき私は、
「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」こそ、戦争の十字砲火の中で生まれたミック自身なのではないかと思い当たりました。

当時、「ブライアンとミック・ジャガー part6」で書いたこと。

こうやってミックに関するブログを書いてきて、ふと思いました。
「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」こそ、ミック自身なのではないかって。

part1の冒頭に「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の歌い出し、”I was born in a cross-fire hurricane”はミックの実体験でもあるのかも?と書きましたが、本当にミックは自分と、この歌詞を重ねていたのかもしれません。
業界に入った当初は訳もわからず、迷いもあって、自信もなかった。でも――
”でも もう大丈夫 俺はジャンピン・ジャック・フラッシュ! そいつは冗談 冗談 冗談”
(But it’s alright now….I’m jumpin’ Jack Flash It’s a gas, gas, gas)
……ミックはこの頃、確かな自信を手にしたのかもしれません。
「もう大丈夫、俺はジャンピン・ジャック・フラッシュなんだから!」、と思い込めるほどに。

そして続くブライアンとミック・ジャガー part7で書いたこと。

part6で私は”「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」こそ、ミック自身なのではないか”と思ったと書きましたが、’99年の「rockin’ on」6月号のインタビューでミックは、インタビュアーの、
「「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」というキャラクターは貴方自身のことだったんですね」という質問に、
「うん、俺の書いた詞の中では最も私小説的要素の強いものの一つと言えると思うよ」
と答えています。

さらに「ブライアンとミック・ジャガー part10」では、次のようにミックのインタビューを紹介しています。

先日も引用した「rockin’ on」のインタビューで、ミックは、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を”俺の高揚剤ソング”と言い、
「例えば、自分がメチャ落ち込んでるような時でもこの歌を口ずさんでみさえすれば即、世界の頂上に立ってるような気分になれる、っていうかさ。曲調、歌詞ともに俺の士気を高め、俺を鼓舞してくれる作用を持ってるみたいなんだ」
と語っています。
そして、
「この曲を聴く人間にとっても『この俺様にとっては全てがガスみたいなもの。この俺様にできないことなんか世界中にありゃしないんだ!』って気分になってもらうことこそがこの曲の利用価値でもあるわけだよ」
とも語っています。

ジャンピン・ジャック・フラッシュの深さ

私はこのように、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を大分理解したように思っていましたが、
”「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の聴き方が変わる本”を読み終えて、この曲がもっともっと深いものであることを知りました。

歌詞に出てくる「cross-fire」は「対空十字砲」という軍事用語であり、
「Jumping Jack Flash」とは英国軍の挙手跳躍運動という意味があり、
”Flash”は爆弾が破裂した時の閃光、
”hurricane ”は1952年に英国が行ったはじめての原子力爆弾実験の作戦の名称なのだそうです。

更に”gas”には、大ぼら、無駄話、という意味があるのと同時に軍隊用語では「毒ガスを使う」という意味もあるのだそうです。

詞を書いた頭のいいミックが、この曲に幾重もの意味をこめたことが伝わってきました。

もしかしてミック自身は、
「違うよ、ただの高揚剤ソングさ」
などと言うかもしれませんが。

そう言い切ったとしたら、それはそれでカッコいいですね。

「またまた~。それでだけの曲じゃないでしょ!」
と突っ込みたくなるような。

ブライアン目線でのジャンピン・ジャック・フラッシュ

さて、このブログは、やはりブライアン目線で書きたいので、今回もブライアン目線でいきます。

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」ができた過程については、以前も紹介しましたが、
ビルの著書「ストーン・アローン」には以下のように書かれています。

<Jumpin’ Jack Flash>の重要なリフはおれの考えたものだった。すばらしいアイディアの曲にはときどきあることだが、そのリフは非正統的な方法で展開していった。ある晩、モーデンでリハーサル中、おれはミックとキースが来るのをピアノの前に座って待っていた。おれがエレクトリック・キーボードを弾きはじめたときに、チャーリーとブライアンが来た。そのとき、おれは自分で見つけたすごいリフを、あれこれいじくっていたのだ。チャーリーとブライアンがおれに合わせて演奏をはじめると、とてもいかした、タフな音になってきた。ミックとキースは入ってきたとき、こういった。「続けろよ。絶対忘れるんじゃないぜ……すごくいかしてるんだからな」
数週間後オリンピック・スタジオで、おれのリフの出番が来た。ミックの「ハリケーンが吹き荒れるなかで、おれは生まれた……」(”I was born in a crossfirehuricane…”)という見事な歌詞のバックボーンになる部分だ。おれたちは全員でメロディを作り上げた。おれが作曲した部分は完璧な出来だった。だが、おれたちのこれまでの曲の中でも1,2を争うこの曲のクレジットは、ジャガー/リチャーズになっている。

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ビルがリフを考えた、
そしてチャーリーもブライアンも曲作りには参加していた。

歌詞はミックが考えたのでしょうけれど、少なくともブライアンも曲作りには参加していたのです。

ブライアンがメンバーを「あいつら」と言った理由

そこで私が気になったのは、ブライアンのこの↓発言です。
「ブライアン・ジョーンズ 孤独な反逆者の肖像」(マンディ・アフテル著)より

ストーンズが「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を録り終えた後、ブライアンは6時にロニーに電話してきて言った。
「夜中から今までずっとレコーディングをしていたんだが、俺たちはまたロックンロールにもどっていきつつあるぜ。あいつらの今度の「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」って曲、こいつは本当にすごいよ」
ロニーはこう語る。
「その時のブライアンは、自分はもはやこれまでって悟ったのよ。でも彼はみんなのために喜んでいたわ」
彼がストーンズのことを”俺たち”と呼ばずに”あいつら”という呼び方をしたのは、なんと皮肉なことであったろう。

※ロニーはブライアンが信頼していた友達(女性)

自分も曲作りに参加していたのに、
”あいつら”
と言ったブライアンの心境が気になりました。

ここに書かれているように、”自分はもはやこれまで”と思ったからでしょうか。

自分とストーンズを切り離して考えていたからでしょうか。

――いや、それはちょっと違う、
考えていて、思いつきました。

ブライアンにとってメンバーは、とくにミックとキースは、デビュー前からずっと”可愛い弟分”みたいな存在だったのだと思うのです。

売れない頃、息をするのも順番にしなければならないほど狭いベッドを3人で使い、
暖房もない室内で、お腹をすかせながら、寒さを紛らわすためにキースと2人、ギターを弾いていた。

なにがなんでも売れたくて、ブライアンは一人必死になって、売込みをした。

当時は音楽的に未熟だったミックとキースを引っ張っていった。

時が経ち、ミックとキースが主導権を持つようになった。

それなのに「弟分」だなんて、いつまでも思っているわけないじゃないかと思われるかもしれません。

こんな例をあげると、わかりやすいかも。

ある年配の男性の体験談。

入院している寝たきりのお母さんをお見舞いに行ったときのこと。

「帰りがけにさ、俺に向かって”気をつけて帰るんだよ”って言うんだよ。自分は寝たきりの状態なのに、こっちの心配をしてるんだよ。母親にとって、息子はいつまでも息子なんだよなあ」

……こういう心境と似ているような気がするのです。

あと、例えば社会に出て、出世しようが落ちぶれようが、学生時代の先輩と後輩は、いつまでも先輩と後輩の仲ですよね。

どんなにケンカしたって、ないがしろにされたって、ミックもキースも心底許せない存在になんてなっていなかった。

どんなに憎まれ口を叩かれようが、彼女をとられようが、ブライアンの中では、血のつながりはなかったにしても「可愛い弟分」だった。

だから私はこう思うのです。
「俺らの」じゃなくて「あいつらの」と発言した時ブライアンが感じていたのは、ミックとキースをはじめとするメンバーへの愛情だったのだと。

ストーンズのメンバーと自分を切り離して「あいつら」と表現したというよりも、
バンド内で力を失っていても、メンバーのことを可愛い弟分みたいに思っていて(そういった意味で自分とは一線ひいていて)「あいつら」と表現したと理解する方が、ブライアンっぽいと思いません?

だから「あいつら」が力をつけて、いい曲を作り上げたことが、”兄貴分として”心底嬉しかった。

――と、いうところで、
今回はもちろん「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を聴きましょう。

初期の頃はミックを跳ね除けてまで前に出ていたブライアンが、やたら控えめな感じなのがちょっと寂しくもありますが。

でもなんだかんだ言われてますが、ミックもキースも、ブライアンのこと、好きだったと思います、私は。

コメント

  1. 匿名 より:

    この詩の gas については、冗談とかほら話とかいう訳がほとんどで、なんかしっくりきていなかったんですが、むしろ [URL] のページにある用例で言っているのではないかと、個人的には思います。

  2. るか。 より:

    ふむ~。。。
    スパムコメントが多く、規制をかけているせいか、
    URLがわからなくなってしまっていますね。。。