ブライアンとミック・ジャガー part7

part6の続きです。

文中の※引用※は「ミック・ジャガーの真実」(クリストファー・アンダーセン著、福武書店)からです。

はじめに、part6に追記(1)。

part6で書いた裁判で、ブライアンが陪審員により一旦は有罪とされた後、最終的に裁判長に罰金刑を科された時のミックとキースのコメントを紹介しておきます。

ミック「ブライアンが刑務所に行かなくて、俺たちはほんとによかったと思っている」
キース「ブライアンはあんな場所に立っていられるような男じゃないんだ。まるで猟犬が血の匂いを嗅ぎつけたときみたいに、彼を責めたてている。 『責めたてていれば、いまに奴は死んじまうさ』 そんな残酷な気持ちで、ブライアンを何度も何度も痛めつけてやがるんだ。あのやり方はレニー・ブルースがやられたときと同じだぜ。ミックと俺に対しては、『奴らはおとなしい連中さ』くらいに思っているのだろう。特に『ザ・タイムス』の社説がでたあとはな。だがブライアンに関しては違う。奴らは彼が脆いことを知っていていじめぬいているんだ」

ミックとキースの性格の違いが、よく出ているコメントだと思います。

2つを比べると、ミックのコメントは素っ気なく感じられるかもしれませんが、ここには決して悪意はなく、本当にブライアンが刑務所に行くことにならなくて”よかったと思っていた”のだと思います。

追記(2)

part6で私は”「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」こそ、ミック自身なのではないか”と思ったと書きましたが、’99年の「rockin’ on」6月号のインタビューでミックは、インタビュアーの、
「「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」というキャラクターは貴方自身のことだったんですね」という質問に、
「うん、俺の書いた詞の中では最も私小説的要素の強いものの一つと言えると思うよ」
と答えています。

憶測で書いたことでしたが、全くの見当違いじゃなくてよかった~、とホッとしています。
これで、この先もこのブログを書いていって大丈夫、な気持ちになれました。

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1968年7月26日、ミックの25歳の誕生日、自分たちのクラブ「ヴェスオ」で、どんちゃん騒ぎをしたミックは更に記念すべきプレゼントをもらった。

マリアンヌが妊娠したのだ。

しかし二人は結婚する気はないといい、世間からたたかれた。(マリアンヌはジョン・ダンバーとの離婚が成立していなかった)

この春にはフランスの映画監督、ジャン=リュック・ゴダールに、「悪魔を憐れむ歌」のレコーディング風景の撮影を許可した。完成した映画は「ワン・プラス・ワン」である。

映画『ワン・プラス・ワン』予告篇

この映画は、ブライアンと彼以外のメンバーとの亀裂を露呈している。

ブライアンが勇気を奮い起こして意見を言おうとしても、ミックに黙殺された。
9月2日~11月1日、ミックは映画「パフォーマンス」の撮影をした。映画レビューはコチラ→http://kaiteki9.info/2007/03/27/performance/

監督はドナルド・キャメル。

ミックの役は落ちぶれた元ロック・スター、彼の秘書はアニタ・パレンバーグが演じた。
マリアンヌはミックに役作りのアドバイスをした。

「自分が哀れな落伍者の、先の見えない、両性愛者の、ドラッグ漬けのブライアンになったと思えばいいのよ。でも少しはキースのしぶとくて、自己破綻的な、カッコいい無法さも必要ね」ジャガーは彼女のアドバイスどおりにした。その結果、気取っていて、お洒落なジョーンズとリチャーズを交配したような、もっと言えば、実際のジャガーとそんなに違わない人物になった。

(^▽^;)

以前、この映画の役作りはミックがブライアンを参考にしているはずだから、これを観ればミックから見たブライアンが少しは理解できるかも、と思い、「パフォーマンス」を観たというブログを書きました。

そして私は、「ミックは、やはりミックにしか見えなかった」というような感想を持ったのですが、これを読んで納得。

ブライアンとキースを交ぜて役作りをしたら、元のミックとそれほど変わらない雰囲気になったのですね。

やっぱり!

しかし、ブライアンは「両性愛者」ではないでしょうに。

パレンバーグ(アニタ)ほどはしゃいでいた者はほかにいなかった。彼女は撮影期間中ずっとラリっていたと自分で言っている。アニタは、自分がリチャーズやジョーンズと寝たのはジャガーが目当てだったからよ、と言ってはリチャーズを苦しませてサディスティックな快楽を味わっていた。

げーっ!

これ、本当でしょうか? いえ、口だけで本気じゃないですよね。口だけだったとしても、ひどいですが。

別れることになったとはいえ、キースのことは(ブライアンのことだって)好きだったはず、ですよね。

キースは、アニタとミックの撮影に嫉妬し、映画のテーマソング「ターナーへの伝言」を書き上げるのにわざと時間をかけていた。

キャメルと(共同監督の)ローグは、ミックをつかまえて、キースとの仲をなんとかするようにと頼んだ。

するとミックがべそをかきはじめたのでふたりは驚いた。ローグは言う。「キースとのもめごとにミックは心からまいってたんだ」

更にローグは、

「アニタは、ミックとキースがお互いに感じあっているような大切な存在に自分がなれないとわかっていたから、ふたりの間に楔を打ち込んで憂さ晴らしをしたんだ。あれは本物の悪女だね」

と言った。

11月、マリアンヌは流産してしまう。

マリアンヌは荒れ、ミックは彼女を慰め、元気付けた。

そしてミックは12月発売の「ベガーズ・バンケット」(アメリカでは11月に発売)と、テレビスペシャル「ロックンロール・サーカス」の準備にかかりきりになった。

「ベガーズ・バンケット」のカバーデザイン(トイレの落書き)を巡って、デッカの社長、サー・エドワード・ルイスとの闘いの末、ストーンズ側は折れた。

カバーは卑猥なトイレ壁とは正反対の、白地にグループ名とアルバム・タイトル、左下の隅にRSVP(返事待ってます)とあるだけのものだった。

リリースは予定より4ヶ月遅れた。

予期せぬリリースの遅れのせいで、ビートルズの「ザ・ビートルズ」と同時期にレコード店に並ぶことになってしまったが、この勝負はストーンズが勝利をおさめた。

テレビでもミックはビートルズを出し抜くつもりでいた。

ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」がうまくいかなかったのに対して、「ローリング・ストーンズ・ロックンロール・サーカス」に取り組んだのだ。

800人の招待客を前に、ロンドンのウェンブリー・スタジオで3日間に渡り撮影され、膨大な費用をかけた。

ミック以外は「すごいショー」だと思ったが、ミックは自分がひどくくたびれて見えることにショックを受け、このプロジェクトを放棄した。

この番組は、どこの局でも放送されなかった。

この不運なテレビ・プロジェクトは、ミックとキースを元の鞘に戻す役にはたったようだ。

だが、キースの目につかないところで、ミックはまだアニタ・パレンバーグにつきまとっていた。彼女によれば、キースを捨てて、マリアンヌ・フェイスフルのかわりになってくれとミックに繰り返し懇願されたという。そのエサに、ふたりで主演する映画のプロジェクトを見つけてきた。「ミックはカップルになりたかったのよ」アニタはヴィクター・ボックリスに語った。「でも私は嫌だったわ。ミックは自分の女たちにするみたいに私を連れまわして、見せびらかした。キースはもっと人間的ないたわりとか愛とかを必要としていたのよ」

長年のお蔵入りの後、ビデオ(DVD)化された「ロックンロール・サーカス」で、ミックはくたびれているように見えるでしょうか。

私には、ミック(だけ)は生き生きとしていたように見えるのですが。

むしろ、くたびれていたように見えるのはキース。

ブライアンはくたびれている、を通り越して、ボロボロに見えます。

それにしても、ミックがアニタに付きまとい、「マリアンヌの代わりになってくれ」なんて本当に言ったのでしょうか?

ミックは、マリアンヌのことは大切に思っていて、ミックの方は別れたくなかっただろうと思っていたのですが。

女性を自分の添え物のように連れまわす、というのは、なんとなく理解できるとしても。

マリアンヌは、それをも越えて、ミックにとって特別な存在だったと思っていましたが……。

撮影後、ミックとマリアンヌ、キースとアニタは4人で一ヶ月に渡る南アメリカへの旅に出る。

ミック&キースはアニタを加えて、この旅行をテーマに「ホンキー・トンク・ウィメン」、「無情の世界」を書いた。

5月28日、ミックが「太陽の果てに青春を」の主演に決まったことが発表された。

同じ日の夜、ミックの自宅に警官が踏み込んできて家宅捜索し、4分の1オンスのマリファナを発見した。

再びミックはマリアンヌのために有罪判決を受けた。(200ポンドの罰金)

マリアンヌは無罪だった。

今回の逮捕劇もブライアンが逮捕されたときと同じ警官が指揮をとっていた。

ミックはストーンズが睨まれていることを確信した。

ブライアンが参ってしまうのもムリはないだろうと共感を持ちながらも、ミックはツアーに出るため、ブライアンをメンバーからはずす計略をめぐらせた。

アレン・クラインの助力を得て、ミックはストーンズがツアーできるよう、ブライアンを一時的にメンバーからはずすよう画策した。本当は永久にグループを離れる予定だった。それによってブライアンにはストーンズ・レコードからロイヤリティと10万ポンドの年金が死ぬまで支払われる。子細な問題を処理した後、ミックに残された仕事はローリング・ストーンズの創設メンバーであり、最初のリーダーをクビにすることだけだった。

さて、次回はブライアンがストーンズから脱退した時のことについて、いくつかの本に書かれていることを参考にし、妄想も含めながら(含めなくてもいい?^^;)書きたいと思います。

ところで↑で、「マリアンヌはミックにとって特別だったのではないか」というようなことを書きましたが、ミックがマリアンヌのために書いたのではないかと言われている「Wild Horses」。

このWild Horses(荒馬)はマリアンヌのことではなく、ブライアンのことだという解釈もあるようですが、ミックがマリアンヌを想って書いた……、と考える方が自然な気がします。(キースがアニタのために曲を作り、ミックが詞を書いたという説が有力)

荒馬=ブライアン、だとする説というのは、マリアンヌがオーストラリアで自殺未遂をし、奇跡的に助かり、病院で目を覚ましたとき、ミックがベッドの脇の椅子に座っていた……、泣き出したミックにマリアンヌが「心配しないで。荒馬(Wild Horses)は私を連れて行けなかったわ」 と呟いたところからきているようです。

マリアンヌは昏睡状態の中で、亡くなったブライアンと一緒だったそうなので。

ブライアンは、「自分と一緒に来てはいけない」とマリアンヌに戻るように言ったそうですが。

このブログの最初の方で書いた「rockin’ on」のインタビューでミックは、
「「WILD HORSES」というフレーズ自体がイギリスの古い諺からきててさ。一般的に『たとえ野生馬にひきずり回されようが、自分の気は変わらない』的な使われ方をよくされるんだよ」
と語っています。

このタイトルがイギリスの諺からきていたとは……、このインタビューを読まなければわからなかったです。

先日買ったDVD「The Biggest Bang」で、何人かのアーティストとデュエットしていたりして、耳に残りました。いい曲ですね。

そこで、歌詞(対訳)を紹介しておきます。

Rolling Stones – Wild Horses

Wild Horses

幼い頃 生きていくのはたやすかった
おまえの欲しがるものは何でも買ってやった
野生の女よ 俺のことは知ってるだろう
この手から おまえを失いたくはない
野生の馬も 俺を引きずってはいけなかった
野生の馬も 俺を引きずってはいけなかった


おまえが鈍い苦痛に苛まれるのを見てきた
今はその苦痛を俺に課そうとするおまえ
混雑した出口やステージがはねた後の人の列
そんなものでも この苦痛よりはマシだ
野生の馬も 俺を引きずってはいけなかった
野生の馬も 俺を引きずってはいけなかった


罪深く嘘で固められたおまえを夢みてた
今の俺は自由だが もう時間がない
信頼は裏切られ 涙だけが後に残った
命が尽きた後 あの世でふたりで共に暮らそう
野生の馬も 俺を引きずってはいけなかった
野生の馬に いつか俺たちも乗ろう
野生の馬も 俺を引きずってはいけなかった
野生の馬に いつか俺たちも乗ろう

後日に続きます。