ブライアンとミック・ジャガー part12

part11の続きです。
やっと、このシリーズ?の最終回です。

ミックのことを更に知るために、2002年リリース(かな?)のDVD「BEING MICK」というドキュメンタリーを観ました。

ミックは常にハイテンション。華やかであり、ストイックであり、そして良き父親だったりします。

でも、ジェリーとは99年に離婚してしまっていたのですね。
とはいえ、いい関係を保っているようですが。

それにしても、ミックの子供たちの可愛いこと!

DVDには、ジェリーとの間の4人の子供、ビアンカとの子供のジェイドが出てきます。(マーシャとの子供のカリスとは電話で話しているシーンが出てきます)
97年生まれのガブリエルなどは、「ミックの孫?」っていうほど幼いです;

84年生まれのエリザベスは本当に可愛くて綺麗で、ミックが”自慢の娘”として連れてまわりたいのもわかるような気がしました

さて、このブログはブライアンのことをもっと知るために、ブライアンのまわりにいた人たちのことにも触れていこうという思いから、書き始めました。

ブライアンと確執があったというミックとの仲は、どういうものだったのか、二人の間にあったものはなんだったのか、と考えながら書いてきました。

一緒にバンドを組もうとしたのだから、最初から対立していたわけではないだろうに、いつから、どうして、二人の仲はこじれてしまったのか。

しかし書いていくほど、二人の間にあった感情は理解しがたく、一体、どうなっているんだろう?と混乱しました。

最初は生き生きしていたブライアンがどんどん落ち込んでいくし、ミックとの仲もこじれていくし、ついにブライアンは死んでしまうし;;

でも、なんとか私なりの結論にたどり着きました。

ブライアンファンとして、少しだけ心が和む結論に。

全然見当違いかもしれませんが、興味ある方は、読んでやってくださいませ。

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ミックは後年、
「ブライアンとは、本当の意味で親しかったことはなかった」
「相性が悪かった」
と切り捨てています。

ブログ内にも「ミックはブライアンを嫌いだったのだろうか? 嫌いだったから、いつか(メンバーから)はずしてやろうとタイミングをはかっていたのだろうか」というようなことを書きました。

私なりの解釈――「ミックはブライアンを嫌いだったのか?」の答えは、「NO」です。

むしろ正反対、ミックはブライアンのことが大好きだったのだと思います。

それは友情というよりは恋心にも近い感情だったのだと。

というより、そもそもミックの友情の示し方が「恋心に近いもの」なのだと思います。

「ロック・スターの女たち」(音楽之友社)の中で、アニタ・パレンバーグが次のように語っています。

「ミックに初めて会った時から、彼がキースに恋しているってことがわかったわ。いまだにそうだと思う。」アニタの意見によると、ミックは、「腕っぷしが強くて男気のある」キースのようになりたがっているという。

またトニー・サンチェスの著書の中には、「ブライアンというのは、実はジャガー自身がこうありたいと思っていた姿なのだ」と書かれています。

ミックは自己愛が強いタイプだと思うので「誰かのようになりたい」と、本気では思わないでしょう。

ただ自分になくて、自分の中に取り入れたいと思っているものを持っている人には憧れる……「恋心」に近い感情を持ってしまうのだと思います。そしてそれがミックの”友情”なのです。

下記は、part1で書いたことです。

***

「一方、ブライアンはミックに隠れて、ミックをバンドからはずそうとしていた。

そのことに気づいたミックは、ブライアンの妻(正式に結婚はしていなかったはずですが)パットをそそのかしてベッドに連れ込んだ。ミックはその浮気の現場をブライアンに見せつけたかったのだという。

その現場を見ることはしなかったが、そのことを知り、ブライアンはその屈辱に耐えられなかった。

更にミックは、キースとブライアンの仲に楔を打ち込もうと、ブライアンまでも誘惑した。

※引用※
キース、ブライアン、ミックとそれぞれ肉体関係をもったアニタ・パレンバーグは「ブライアンはミックと寝ることによってたくさんのことをぶちこわしたのよ」と言う。ブライアンはジャガーとの関係を彼女にしゃべっていた。「ミックはブライアンがいろいろバラすのには頭にきていたようね。何年かあとになってミックがゲイだという噂がしょっちゅう流されていたけど、あれはブライアンがミックの弱点を暴露して彼のプライバシーを侵害していたのよ」

***

これを書いていた時は「ミックがブライアンを誘惑した? ホント??」
と思っていたのですが、性別をも超越したところがあるようなミックですから、これは本当かもしれないですね。

ミックがブライアンに恋心にも近い感情を持っていたとしたら、尚更。

キースとブライアンの仲をジャマするためというよりも、むしろミックは”純粋な気持ち”でブライアンを誘惑したのかもしれません。

しかし、ミックはその”純粋な気持ち”を、ブライアンに面白半分に(というか、段々ブライアンはミックに敵意を持つようになったこともあり)言いふらされてしまうわけです。

いくら恋心があったとしても、いえ、あったから尚のこと、心穏やかではいられなかったでしょう。

そんな仕打ちを受けても”好き”だという複雑な心境をミックは抱えていたのです。

だって初期の頃のブライアンはものすっごくカッコよかったんです!

それこそミックが惚れずにはいられないくらい! 例えば、ミックをはねのけて歌うブライアン!

……失礼しました、初期の頃だけじゃなくて、ブライアンはずっと魅力的です。

では一方、ブライアンはミックのことをどう思っていたのでしょうか。

ブライアンはたぶん、最初からミックのことを下に見ていたのだと思います。

自分の方がいろいろな面で経験豊かだったし、特に音楽的な面、音楽業界でやっていくということについては、最初の頃は自信がなさそうだったミックよりも、絶対的に「俺のほうがやる気も実力もある」と思っていたのでしょう。「俺が引っ張っていってやらなくちゃ!」みたいな。

ミックも初めはブライアンに従順だった。

しかも、ブライアンはミックの自分に対する気持ちに気付いた。

「こいつは俺に惚れている、しかも音楽的には俺より下」、
よって、
「こいつは俺の存在を脅かしたりはしない」
と、ミックを信用することにしたのです。
(ブライアンは根っからの女好きで、男性に対して恋心を抱く、ということはなかったと思うので、ミックの片想いですね)

ここがブライアンとキースの違いで、キースはミックの自分に対する”恋心”に気付きさえしていないか、気付いていたとしても、それで優越感に浸ったりはしないタイプなのでしょう。

また、これはビルの著書にも書かれていますが、ブライアンとミックとキースが同居していた頃、「ミックがいきなりホモっぽい仕草を始めた、6ヶ月ばかりそれは続いた」、とあります。

ブライアンとミックとキースが3人でいると、どうもしっくりいかない雰囲気になる、というのはこのへんにヒントがあると思います。

つまり、3人でいると、ミックが女性的な感覚になってしまう、

ブライアンに恋するミック、キースに恋するミック……、”二人の男に恋するミック”――これでは奇妙な雰囲気になるだろうと納得できます。

3人が一緒に仲良くできるはずはないでしょう。

最初の頃、ブライアンはバンドを好きなようにコントロールしていた。

ところが少しずつ、おとなしく自分に従っていたはずのミックがバンドを仕切るようになっていきます。

しかも自分を疎外しようとしている……、

ブライアンからしたら、黙ってこれを受け入れるわけにはいきません。

「どうしてこんなことになったんだ? ミックは俺を裏切ったのか?」
と思ったかもしれません。

「いや、でもミックは俺に惚れているのだから俺に悪いようにはしないはず……」

ブライアンはミックの恋心を試すかのような反逆に出ます。

ブライアンをもう少しバンドの中心に引っ張ってあげたい気持ちもある、でもミック自身、注目されるのが大好きで中心にいたい欲求が強いので、手に入れたポジションを譲りたくはなかった。

ミックは注目されることにより、どんどん自信をつけていきます。

対照的に、元来の精神的、また身体の弱さ、バンドからの疎外感、ドラッグ問題のせいで、ブライアンはどんどん弱っていきます。

ブライアンは、バンド内でうまくやっていくためには、不本意ではありながらも、ミックに従わなくてはならないのかと思ったのでしょう。

しかし、その責任の一端は自分にもあるとはいえ、ミックは自分が憧れていたブライアンの落ちぶれていく姿を見たくはなかったのです。

下手に出てくるようなカッコ悪いブライアンなんて許せなかった。

意地悪な仕打ちをしても、歯向かってくるくらい勢いのあるブライアンでいてくれなければ。

矛盾だらけの恋心、というものですね。

憎まれたいわけじゃないのに、ブライアンの自分に対する憎しみは増していくばかり。

ミックはブライアンに対して、どう接したらいいのか、わからなくなっていたかもしれません。

ミックがブライアンに手を差し伸べたのは一回だけだったといわれています。

レッドランズの堀に飛び込んだブライアンを助け出したときです。

ミックはこの時、ブライアンを助けることが出来てよかった、と思ったかもしれませんが、ブライアンとしてはミックの気持ちを確認できてホッとした同時に、ミックに助けられるなんてやはりプライドが許さなかったのかもしれません。

自分を押し殺して、ミックに従おうともしたものの、結局ストーンズから追い出される破目になってしまうし。

複雑です、

こうして考えてみると、この二人の間の感情はなんて複雑なのだろう、と思います。

でも、このように考えると、わけがわからない二人の仲が「なるほどね」と、理解できるように思えるのです。

ハイド・パークでのコンサートに、ミックはブライアンを呼びたがっていました。(結果的にはその2日前にブライアンは亡くなってしまったのですが)

「さらし者にしてやろう」という陰険な気持ちからではないかと周囲の人たちは思ったそうですが、本当にそうでしょうか?

ミックは純粋に、ブライアンに会いたかったのかもしれません。

だってそんな理由でもなければ、もう会えない仲になってしまったのですから。

特にブライアンは呼び出されでもしなければ、ミックに会いたがらなかったでしょう。

ミックはブライアンの状態も心配だったのかもしれないし、「クビにしたきり会わない」、というふうにはしたくなかったのかもしれません。

だからこそ、ブライアンの死の知らせは、誰よりもショックだったはずです。

でもミックは「冷血人間」を装った。

ここで折れてヨレヨレになっていたら、ストーンズが壊れてしまう。

ブライアンを犠牲にしてまで維持したかったストーンズを続けていくことしか、ブライアンに対する弔意の示しようがなかったのです。
(「ミック・ジャガーの真実」には、ミックはハイド・パークのコンサートを強行しようとした、と書かれていたのですが、別の本には、ミックは中止にしようと言ったが、キースとチャーリーが予定通りにコンサートをやろうと言ったと書かれていました。またビルの著書にはブライアンの死の際、”ミックはひどく取り乱していた”と書かれています)

ミックは報われない恋に終止符が打てたと同時に、その対象をこの世から失ってしまいました。

そして更に同時に、その死によって、ブライアンは心の中の永遠の存在になったのです。

ブライアン寄りの人たちからは、ミックがブライアンを死に追いやったかのような言われ方をされています。

当然、ミックもそれを感じ取っているでしょう。有名人である分、敵も多いでしょう。

表向きはクールなビジネスマン的な面を持つロック・スターをやりながら、裏ではサディスティックと思えるような行為をしたりしていて、それは決して誉められたことではないですが、そうでもしないと精神のバランスがとれないのかもしれません。

「あいつは自分が思っているほど、嫌な奴じゃない」と言ってくれる”グリマー・ツインズ”とも呼ばれる、ブライアンの死をも共有したキースの存在は、ミックにとって”恋心”を抱く対象を越えて、かけがえのないものになっていると思います。

’99年6月号の「rockin’ on」で、ミックはキースとの仲について聞かれて、
「絶対的な絆っていうより、お互いから何故か決して逃れることができない腐れ縁、かな? 俺とキースの場合は。基本的な性分からいってもあらゆる面で正反対だし、何もしないで同じ部屋にいるだけでお互いの仕草一つがいちいち気に障る、みたいなところもあるんだよね、実際」
と答えています。

一人でも「本当の自分の味方」がいてくれたら、その他の世界中が全部敵でも戦い抜ける……、そんなことってありますよね。

part12まで続いてきたこのブログですが、ブライアンとミックの仲にあった感情をこのように解釈すると、今のストーンズにもブライアンはいる、と思えます。

実質的にストーンズを引っ張っているのがミックだとすると、ミックがストーンズを続けているのにはブライアンを思う気持ちがあって……、つまり、
今でも、ストーンズを転がし続けている力の根底には、ブライアンの存在があるじゃ~ないですかっ!!

このブログを書いてきて、こういう結論に達することが出来て、ブライアンのファンの一人として、なんとなく幸せな気持ちになれました。

ミックについてもいろいろ知り、ファンになったとまではいかないまでも、今までより好意が持てるようになりました。

気になる存在になったことは、確実。

これが今、私が出した結論、ブライアンとミックの関係、です。

今後また知らなかった事実がわかったら、考えが変わるかもしれませんけど。

ところで最後にひとつ疑問。

ブライアンがストーンズを脱退するときに、アレン・クラインが反対したにもかかわらず、ミックはブライアンに、「ストーンズ・レコードからロイヤリティと10万ポンドの年金が死ぬまで支払われる。」という条件をつけました。

お金には細かいミックのはずなのに、これはどういう心境からだったのでしょうね。

ブライアンがストーンズから抜けても困らないようにと便宜を図ったつもりなのか、ブライアン敬う気持ちからなのか、それともブライアンが「脱退すること」に納得せざるを得ないような金額を提示して面倒な争いになるのを避けたのか。

結局、このお金は一度もブライアンに払われることはなかったのでしょうが。

これは、ミックのブライアンに対する「思いやり(敬意)」だったと考えると、気持ちが楽になるのですが。

サー・マイケル・フィリップ “ミック”・ ジャガー、これからもブライアンの魂と共に、転がり続けてください。

……なんて言ったら、ミックはなんて答えるでしょうか?

「知ったことか!」or「言われなくても、わかってるよ!」?

コメント

  1. アラン より:

    ミックはすごく複雑なんですね。生い立ちなんかも関係しているのでしょうか? それも魅力なんでしょうね。それと、ロックスターにありがちなギミックの部分もあるんでしょうね。「ブライアンとミック・ジャガー」シリーズ、堪能させていただきました。これからもマメに訪問させていただきます。

  2. るか。 より:

    ううう…、堪能して頂いたなんて、恐縮です。ありがとうございます。
    書いてよかった、と思えます;;
    よくブライアンは複雑だったと言われますが、今回書いていて、私にはミックの方がわかりづらいように思えました。
    たくさんの面がありすぎっていうか。
    ロックスターでバンドの顔で裏方の仕事、それもお金のことまでやってる人って、他にいるのでしょうか?
    身体に気をつけて、これからもスターであり続けて欲しいと思います。
    また気軽にご訪問くださいませ。

  3. たま より:

    はじめまして、たまといいます。
    私は60~70年代の音楽がとても好きで、特にビートルズとブライアンは大好きなのですが、このブログを読ませていただいて、自分と同じように、ブライアンや周辺の人物に興味を持っている方がいらっしゃって、とてもうれしかったです。本当に驚きました!とてもくわしく書かれていて、ブログの内容もとても楽しく読ませていただきました。
    ありがとうございました!
    ミックが恋心を持ってブライアンを見ていたという考えは、とても新鮮でした!
    なるほど~と思いました。確かに70年代に入ってから、ボウイとの関係の噂もあったし、性別を超越している感じはありますよね。
    それと、キースがグラムパーソンズと仲良くなった時も、ミックは嫉妬心のような目でグラムを見ていたと言われていますし・・
    キース自身も「俺が仲良くなる奴と、ミックは決して仲良くなれないんだ」と語っていましたし。
    私としては、ミックはブライアンの事を本当に好きだったし、憧れのような目で最初は見ていたけれど、自分にも曲が書けると自信をつけてからは、ショービジネスの世界での欲がどんどん出てきてしまったのではないかな~と思っています。それで、自分よりもカリスマ性があり、立っているだけで圧倒的な存在感を放つブライアンが脅威になっていたのかな~と。まぁ、それだけではない、複雑な感情が色々うずまいていたのでしょうね。
    また訪問させていただきます!
    ありがとうございました!!

  4. るか。 より:

    たまさん、はじめまして^^
    楽しんで読んでいただけたなんて、とっても嬉しいです。
    こちらこそ、ありがとうございます!
    感謝です。
    私は去年の映画で初めてブライアンを知ったので、まだまだ初心者……、新鮮なこともいっぱいです。調べながら書いてはいますが、間違ったことを書いてしまうこともあるかも。
    お気づきの際には(優しく)ご指摘くだされば幸いです;
    キースが仲良くなる人にミックがヤキモチを焼く……、
    それって、まるで女の子みたいですよね。笑
    女の子同士だったら、ありがちかも?って思えるのですが。
    「私の方が、××ちゃんの友達なんだからーっ」なんて。
    ミックはやっぱり女性的な感覚を持っているような気がします。
    それとミックは、うーん、理解しづらいのですが、根っからのスター気質なのでしょうか。
    自分が中心にいたい、チヤホヤされたい、注目されたい、っていう欲求が強いような。
    だからたぶんブライアンが、おとなしく演奏して、目立とうとせず、ミックをたててあげて、インタビューなんかで「ミックは素晴らしいヤツだよ」なんていうふうに振舞っていたら、そしてブライアンが体調を崩さなければ、ストーンズをクビ、にはならなかったと思うのです。
    ミックがブライアンのことを好きだったとすれば、そばにいて一緒に活動していたかったはずですから。
    でもブライアンは、「ミックの好きになんかさせるもんか。おまえのバンドかよ」くらいに思っていたのでしょうね。
    本当に複雑ですよね……
    でもブライアンにとっては、ストーンズを離れて、不自然な人間関係に悩まされず、自分の好きな音楽を自分のやりたいようにやった方が幸せだったのかも。
    なにも実現しないで終わってしまったことが、残念でなりません。
    また、いらっしゃってくださいね。
    ありがとうございました^^