ロックンロール・サーカス

「ロックンロール・サーカス」のDVDを今更ながら、観た。

いえ、ショーとサイド・ショーの部分は何度も観てたんです。

しかーし! なんと私は、このDVDにコメントがつけられている映像があることに気付いてなかったんですねー。

監督をはじめ、ストーンズのメンバー、出演者たちのコメント入り画像、3パターンで、1回のショーが約1時間なので合わせて3時間強。

今更ながら、それらを初めて観たのでした。
(このDVDが、こんなに見応えのあるものだったとはっ)

「ロックンロール・サーカス」の演奏は、ブライアンのストーンズでの最後の演奏で、その痛々しさはよく語られていますが、今回、何人かのコメントから、当時のブライアンの様子が更に詳しく伝わってきました。

なんといっても、同じ場所にいた人たちの証言ですから、生々しいです。

3時間強のコメントの中から、ブライアンに関する、印象に残ったコメントについて書きたいと思います。

まず、監督であるマイケル・リンゼイ・ホックのコメント。
「実は本番前日のリハーサル後のことだ。
私は当時ガールフレンドとハムステッドに住んでいて、その通りの先にブライアンもアパートを借りていた。
リハーサルを終え、帰宅し、食事をしていた真夜中に、電話が鳴った。
相手は泣きそうな声のブライアン。
彼は”ショーには出ない”と言った。
理由を聞くと”みんなが冷たくする”、”誰も俺と話をしたくないようだ”、”疎外感を感じるし、もうメンバーとは思えない”、”明日の出演は無理だ”と話した。
夜も遅かったし、彼は気分が落ち込んで、精神的に不安定になってると私は考えた。
そこでブライアンを、こう慰めた。”君なしで、このバンドが成り立つものか”、”君がいてこそローリング・ストーンズだ”とね。
彼は納得してくれたよ。でもその後、メンバーをクビになり、半年後に死んだ」

そして、こう続ける。
「最重要メンバーのブライアンが抜けるとは考えもしなかったよ」

このエピソードは読んだことがあったのですが、こうして生の声を聞くと、いろいろと考えてしまいます。

まず思うのは、愚痴っぽいと言われようがなんだろうが、ブライアンが監督に電話で相談をしてよかったということ。

電話をしたからこそ、監督から、このようなコメントが聞けたのですから。

ブライアンが自分の胸だけに秘めて一人で悩んでいたとしたら、当時の心境が、こういう明白な形で伝えられることもなかったでしょう。
(ブライアンのこういった行動が、更に他のメンバーのカンに障ったのかもしれないですが)

はたしてブライアンは、泣き言を聞いてもらいたいがために、監督に電話をしたのでしょうか。

私には、ブライアンが自分ではどうしようもできない問題を、責任者である監督に訴えたのだと思えます。

周りの人たちに愚痴っただけなら、ただの泣き言といわれても仕方ないですが。

たぶん、会社員が問題が起こったときに上司に相談するような……、そういう思いだったのではないでしょうか。

監督に「出演するように」促され、ブライアンは励まされたのでしょうか。

それとも、「やっぱりわかってもらえない」と、絶望したでしょうか。

私が一番共感したのは、マリアンヌ・フェイスフルのコメントです。

”あの金切り声”にはウンザリした、とか。笑

まあ、ジョンもヨーコもご機嫌だったようだし、それはそれでよかったのかな、と。

あ、そういえば、ミックとジョンの2ショットが、アレン・クラインの物まねだったなんて、気付いてました?
(っていうか、そもそも私は、アレン・クラインの仕草なんて知らない;)

話を戻しますが、マリアンヌの物の捉え方、考え方は好きです。

「芸術には境界がないのが理想だと思うわ。絵画や写真の区別や、ロックとクラシックなど、ジャンル分けしないのが理想なの」

全く同感。

芸術だけではなくて、人間は結構”分ける”のが好きなような気がします。

人種までいかなくても、性格的なこととかでも。

”判断”するのはいいとしても、それによって”分ける”のは、どうなんだろうと思います。
(芸術作品のジャンル分けは、買い物するときには便利ですが)

マリアンヌは、自分自身のことについても語っていますが、特にブライアンについて語っているところを紹介します。

「みんなのブライアンに対する仕打ちは、見ているのが耐えられないほど、ひどいものだった。
この晩は、特にひどかった。
ブライアン自身も居心地が悪そうで、顔色もとても悪かったわ。
避ける方法なんてなかった。
とにかく誰にも止められないような状況だった。
どうすればよかったのか、今でもわからない。
結局、私たちは、なにも理解していなかったのよ。
詳しくは覚えてないけど、執拗なイジメだった。
私には直接関係なかったけど、雰囲気は感じたの」

――見ていられないほどのブライアンへの仕打ちとは、一体どんなものだったのでしょうか。

そして何故、そこまでひどい状況になってしまったのでしょうか。

無視されているだけでも相当キツイものだと思いますが、それ以上に?

メンバーのイジメとは言っても、ビルやチャーリーまでも、そんなに陰湿なイジメをしていたとは思えません。

ただ積極的に、ブライアンを助けたりはしなかったのかもしれませんが。

キースはアニタの件があり、ブライアンとは普通に話が出来ない状態だったのでしょう。

ミックとは……、ミックが、というよりもブライアンの方もミックに対して好意的な気持ちではなかったでしょう。

想像ですが、もしかして――、
ブライアンは他のメンバーとちょっと違っていて、どうしても浮いてしまっていたのかもしれません。

それは単に性格の問題なのか、育ちからきているのかわからないですが。

例えば、笑いの基準が違うとか。

つまりブライアンが冗談のつもりで言っても、他のメンバーには冗談に聞こえない、また他のメンバーが冗談で言ったことが、ブライアンには冗談には聞こえない、など。

キースが「ブライアンはいつも一言多かった」というような発言をしていて、ブライアンとしては単に自分の意見をちょっと言いたいだけだったのかもしれませんが、キースにとってはそれは余計な一言になってしまう。

ただ、ブライアンにも原因はあったにしろ、周りの人間が見ているのもツライほどの状況に追い詰めるのはどうなのでしょうか。

雰囲気を変えられる人がいなかったことが、残念です。

ちょっと長いですが、デヴィッド・ダルトンのコメントを紹介します。

彼は、
「アニタとブライアン、キースのことがバンドを分裂させる直接の原因になったと思うよ」
とも語っています。

「みんな、ブライアンの死にショックを受けた。
その頃、しばらく誰も姿を見かけてなかったんだ。
生前の華やかな雰囲気はなく、見るのもツラいような最期の姿だった。
救いようがなかったとでも言おうか…、まるでスケープゴートだ。
ロンドンの派手な世界の罪を背負い、神からも見放されて死んだように見えたんだ。
真相はわからないよ。
本を何冊も読んだけど、本当のところはわからない。
スタンリー・ブースの本に怖ろしい場面があった。
ジャジューカの虜になったブライアンが山羊を焼き、”これは自分の姿だ”と語ったというんだ。
大麻をやってたんだろうが、こんなふうに思うなんて、かなり精神的に参っていたんだろうな。
ブライアンは”周りから仲間はずれにされた”という。村八分的な思いがあったんだろう。バンドは村みたいな組織だからね。そこから追放されるということは、”死ね”と言われたのと同じ意味を持つんだ。
ブライアンはそんな状況が耐えられなかった。
でもこれには裏話がある。バンドが駆け出しだった頃のこと。ブライアンは他のメンバーの倍のギャラを受け取ってた。
立場を利用して、他のメンバーには内緒でね。ミックとキースは気付いて、当然怒ったよ。
こんな小さなことが後々まで尾を引くとはね。
キースはブライアンのことをこんな風に語っている。
”ブライアンは傷つきやすい怪物だ。だがその反面、鈍感で思いやりの気持ちがない”とね。
ブライアンは自分を無視するメンバーに怒っていたが、逆にメンバーは彼のツアー中の態度にカンカンだった。ツインギターが基本なのに、キースは一人で演奏した。バンドに欠かせないサウンドなのに」

キースはブライアンを”怪物”と言っていますが、ブライアンは人間だよーーーっ!と言いたくなります。

何か思うところがあっての発言なのか、ただ思ったままに正直に言っているのかわからないですが、こういう発言がブライアンを「伝説の人」にしているのかもしれないですね。

キースはブライアンを”思いやりがない”と言っていますが、こんな記述もあります。
「悪魔を憐れむ歌」(トニー・サンチェス著)より。

サンチェスがキースと一緒に車に乗っていたところ、赤信号で停まっていた車にぶつかってしまった。

キースはサンチェスに後のことを任せて、一人でタクシーに乗って去っていった。
この事故を通して、サンチェスはキースとブライアンの違いを思い知らされた、と言う。

ブライアンはいつも人間愛に飢えていた。いつでも自分を、みんなに必要とされている人気者であることを確認するために、友人たちに囲まれていなければ気がすまなかった。一方キースは、冷たい石のような男だ。奴は誰でも利用するが、別に必要としているわけではない。

サンチェスは、ブライアンだったら、事故車を押し付け、自分を一人残して去っていくようなことはしなかっただろうと言っているのだと思います。

場面によって、また接している相手によって、印象は様々なのでしょうが、キースの発言だけで、ブライアンを”怪物のようで、思いやりの気持ちがないヤツ”と判断は出来ないと思うのです。

また、デヴィッド・ダルトンによると、「悪魔を憐れむ歌」はブライアンについての歌だとも言われているそうです。

私はむしろ「YOU CAN’T ALWAYS GET WHAT YOU WANT(無情の世界)」こそ、ブライアンについての歌だと思っていたのですが、これはマリアンヌに捧げられた歌なのだそうです。

当時(1968年)のロンドンはドラッグで溢れていたそうですが、自分のまわりの人たちが快楽に求め、ドラックにハマっていくのを救いたいと――ミックは、”自分を大切にしろ”と愛する人に訴えかけているのだそうです。
(歌詞中の”ジミー”は同じようにドラッグにハマっていたジミー・ミラー?)

「ロックンロール・サーカス」は企画としては素晴らしいものだったと思いますが、ブライアンのファンとしては、こういうコメントを知ると、余計に見るのが辛くなります。

でも、この時のブライアンの苦しみをわかってあげようとすることも、ファンとして大切なのかもしれません。

もちろん完全に理解するのは不可能でしょうけれど、少しでも。

しかしブライアンは、マリアンヌよりもキースよりもアニタよりも、誰よりも早くドラッグから足を洗おうとしていたのに;;

最後に、ミックがメッセージをこめたと言われている曲、「YOU CAN’T ALWAYS GET WHAT YOU WANT(無情の世界)」の和訳を紹介します。

ミックはこの時だって、決してブライアンを完全に突き放したりしていなかったと思うのですが……。

YOU CAN’T ALWAYS GET WHAT YOU WANT(無情の世界)

私は今日 歓迎会で 彼女を見た
彼女は ワイン・グラスを手にしていた
私は彼女が”男”と会うのを知っていた
彼女を恋焦がれる気ままな男もいた
欲しいときに 必ずしも手に入りません
欲しいときに 必ずしも手に入りません
欲しいときに 必ずしも手に入りません
でも 努力すれば 時には
必要なものは 見つけられるでしょう

俺は今日 歓迎会で 女を見た
女は ワイン・グラスを手にしていた
俺は女が”男”と会うのを知っていた
彼女を恋焦がれる気ままな男もいたんだ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
けど 努力すりゃ 時には
要るものを見つけられるだろうよ

俺は デモ行進に参加した
悪口を言われた
歌っていたのは 俺らの欲求不満の発散さ
そうでもしないと 気が狂っちまう
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
けど 努力すりゃ 時には
要るものをみつけられるだろうよ baby

俺は チェルシー薬局に行った
処方箋の薬をもらうためにな
ジミーさんと 並んでいたんだ
ヤツときたら ひどくしょぼくれていた
俺らは ソーダを飲もうとした
俺のお気に入りはチェリー・レッド
俺はジミーさんに自前の歌を歌ってやった
ヤツはポツリといった「参った」と
俺はヤツに言ってやった
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
いや でも努力すりゃ 時には
必要なもんを 手に入れられるだろうよ そうさ

必要なもんは 手に入るよ そうさ baby

俺は 今日 歓迎会で彼女を見た
彼女のワイン・グラスには血だらけの男がいた
彼女は ごまかすのが上手い
そう 彼女の手は 血だらけだったから

欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
けど 努力すりゃ 時には 見つけられるかも
そう 見つけられるだろうよ yeah

欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
欲しいときには 決まって手に入りやしねえ
けど 努力すりゃ 時には 見つけられるかも
そう 見つけられるだろうよ
ああ その通りさ

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コメント

  1. うさこ より:

    私はミックやキースに今更だけど、ちゃんとブライアンの事を語ってほしです。いや・・・今だからこそ、語られると思うけどな・・・。るかさんもそう思いますか?

  2. たま より:

    ロックンロールサーカス、私も大好きです!
    ブライアンのスライドギター・・・聴いててものすごくせつないです。
    whoの演奏といい、dirty macといい、あの素晴らしい時代に生きていたブライアンの一番素晴らしい演奏だと思います。
    最後の「地の塩」で、とっても楽しそうに笑っているブライアンが印象的でした。

  3. るか。 より:

    >うさこさん。
    そう思います。
    今まで語られなかったことを、語って欲しいですね。
    確かキースは本を出すという話があったかと思います。(マリアンヌも)
    もしかして、その中にブライアンのことも出てくるかもしれないですね。
    でも、キースのブライアン評って……(苦笑)
    日本語版が出たら、読んでみたいです。

  4. るか。 より:

    >たまさん。
    出演者たち、すごい顔ぶれですよね。
    長い間、お蔵入りしていたのが不思議です。
    「BEGGARS BANQUET」のブログで書いたのですが、ミュージシャンの龍之介さんが、
    「『ノー・エクスペクテーションズ』が始まった途端、彼(ブライアン)に何かが降りてきた」と絶賛しています。
    またTHE EASY WALKERSのとジェシさんはブライアンのスライドを、
    「Tシャツ、ジーパンじゃない、スーツのスライド」
    と言っています。
    私も「地の塩」でのブライアンの笑顔は大好きです^^
    ブライアンは大勢の人に囲まれて、楽しかったんだろうな~って思います。