ブライアンとキース・リチャーズ part27

メチャクチャ間が空いてしまいましたが、
ブライアンとキース・リチャーズ part26
の続きです。

思いがけなく長くなってしまったこのシリーズですが、
今回が最終回です。

ブライアンとキースの関係はどんなものであったのか、
お互いはお互いのことをどう思っていたのか、
私なりの解釈を書きたいと思います。

今までにも書いてきましたが、
アニタがキースのもとにいってしまったことについて。

これはキースがブライアンからアニタを奪ったわけではなくて、
アニタがキースを選んだ、ということだと思います。

キースは公平に、ブライアンとアニタが話し合える機会を持つようにしていたようですし。

それにどちらにしろ、ブライアンとアニタは上手くいかなくなっていたと思います。
むしろ、別れるチャンスが早くなって良かったんじゃない?って。

確かにアニタがキースに走ってしまったことは、
2人の間に気まずい空気を作ってしまったことでしょう。

でも今回あらためて考えていて、
2人の友情はそんなことでは揺らがなかったはずだと思いました。

複雑な感情が生まれてしまったにしても、一緒にいい時間も過ごしてきたわけですから。

***以前、書いた記事より。***

当時親友だったというクリストファー・ギブスの証言。
「ブライアンの幸福のすべてがアニタに起因すると考える人たちは、事実を何ひとつ知らないんだよ。ブライアンにとっての幸福とは、一緒にいる人によってもたらされたものだとは、僕は決して思わないね。彼が幸福かどうかは、音楽がどうなっているかということのみにかかっていたのさ」

アニタこそ最愛の女性、彼女が去っていったことがブライアンの転落の始まり……、と語られることが多いですが、私は遅かれ早かれアニタとブライアンは別れていたように思います。

アニタがキースのもとに走ったことはショックだったでしょうけれど、もっと長く生きていたら、アニタ以上の最愛の女性を見つけていたに違いありません。

******

言葉を変えるなら、
たかが女のことなんかで、俺らの仲が壊れるわけないだろ! そんな浅いもんじゃないんだよ!
って感じでしょうか。

以前の記事では、
”なにもブライアンの前でアニタとイチャイチャすることなかったのに”
というような、キースを責めるようなことを書いてしまいましたが、
キースとアニタが付き合うようになったのは事実で、
それは現実として受け止めていこう、っていう、
ブライアンとキースの間では暗黙の了解みたいな感じになっていたのかもしれません。

アニタのことが2人の間の溝にならないようにしていこうって。

これも以前、書いたことですが、
キースは実は、上流階級に憧れを持っていたのだと思います。

現に、一時期、服装や言葉遣いまで変わったという証言もあって。(たぶんアニタと付き合い始めた頃)
ただ、自分には似合わないということにすぐに気づいて、
今のようなイメージを作っていったのではないでしょうか。

なので、ブライアンの育ちの良さや上品さには憧れを持っていたと思います。

そしてブライアンの音楽的センスも認めていたと思います。

これも何度も書いていますが、
ミックの友情は”恋愛”に近いような感覚、
キースの友情は”家族的なもの”
なのではないかと思っています。

キースにとってブライアンは、
洗練されているところもあり、私生児までもいるっていう大人の部分を持つ憧れの身内、
音楽的に気が合い、頼りにもなる身内、
だったのだと思います。

だからブライアンがどんどん弱っていって、
演奏もままならなくなっている姿を見て、どうにかしてあげたいという気持ちもあったでしょう。

でも所詮、ブライアンが強さを取り戻せるかどうかは本人次第、
以前は逞しかったのに、すっかり弱って情けない姿を見せられているのがたまらず、
荒療治かもしれないけれど、
ブライアンをグループから切り離すことを決めたのではないでしょうか。

それは身内のように思っているからこそ抱いてしまう相手へのイライラ、
うっとうしさからくる決断だったのかもしれません。

意地悪な気持ちからというよりも、
むしろストーンズから離れて、ブライアンも楽になるんじゃないかと思っていたのかもしれません。

ミックの記事で紹介した、ブライアンが亡くなった後のキースのコメントです。
「ブライアンが死んだ日……、とても奇妙なことが起きた……大勢の人間が、突然消えていなくなったんだ。俺たちはその夜セッションをやっていたが、むろんブライアンがやってくるとは思っていなかった。彼はもうバンドをぬけていたからな。すると真夜中にだれかが電話をかけてきて、『ブライアンが死んだ』と、言った。そんなばかな、と思ったが、ひょっとすると俺たちの運転手のだれかが彼を殺したのかもしれないと疑って、真相を調べようとした……彼らのなかにはブライアンを脅迫していた奴がいたんだ。その晩はパーティーが開かれて、女の子も大勢集まっているはずだった。だがどうもよくわからないんだ。あの夜ブライアンになにが起こったのか俺にはわからない。彼を殺したがっている奴などあそこにはいなかった。きっとだれかが彼の面倒を見なかったんだ。彼の面倒を見ることになっていた人はかならずいたはずだよ。特に、ブライアンはパーティーなるとひどく荒れるからな。だれもがそのことを知っていた。おそらく、彼はひと泳ぎしようと水に入ったんだろう。そしてぜんそくの発作をおこした……俺たちはほんとにショックを受けたよ。俺は現場に直行して、だれがパーティーに来ていたか知ろうとしたが、不思議なことにだれもいなかった。やっとひとりだけつかまえたが、俺の考えでは、そいつが全員を退去させ、警察が来ても事故だと思わせるように仕組んだんだろう。きっとそうさ。奴は名前が公表されるのを恐れて、みんなを追い返したんだ。それでよかったのかもしれないが、俺にはよくわからない。その夜だれがそこにいたのかもわからないし、見つけ出すのも不可能だ……ケネディが殺されたときと同じ心境だよ。真相はまるでわからないんだ」

いくつかのコメントが紹介されていると思いますが、
私はなんとなくこのコメントが信憑性があり、重要な気がしています。

当日パーティーが開かれていたのが事実なのかわからないですが、
キースは「現場に直行した」と話しています

いかにもキースがやりそうな行動に思えます。

そしてここに、キースのブライアンへの気持ちが垣間見えます。

大嫌いで切り捨てた人間が亡くなった現場に駆けつける人がいるでしょうか。
そこで何が起こったのかを調べようとするでしょうか。

まさか、ウソだろ? 一体、なにがどうなってるんだ? なにが起こったんだ?
と思ったからこそ、現場に行ったんですよね。

メンバーではなくなっていたものの、自分にとって大切な存在だったから。

しかし真相は闇の中。

葬儀に参列しなかったのは、ブライアンに対する反感があったからではなくて、とてもそんな心境になれなかったということなのだと思います。

これも以前紹介した文章。
「アニタの寝室のタンスの上に、銀の額縁に入ったブライアンの写真が飾ってあった。キースとアニタは、ひるむことなく現実に向き合っているように見えた」

しかしながら、ブライアンの死後、
キースはブライアンに対する辛辣なコメントを繰り返しています。

仲間と思っていたのなら何故?
という疑問が浮かび上がります。

私は、キースの心境を知るポイントとして、
ブライアンが亡くなった直後のキースのコメントは↑で紹介したように決して辛辣なものではなかったということがあげられると思っています。

それが、キースの本音、素直なコメントなのだと。

辛辣なコメントをするようになったのは、
時間が経つにつれ、
ブライアンはストーンズをクビになってすぐに亡くなってしまった、
グループ内でいじめられていたらしい、
ストーンズをクビになったことで憔悴して亡くなってしまったのではないか、
ブライアンが死んだのは、ストーンズのメンバーのせいだ!
という声があがってきたからではないでしょうか。

ストーンズのメンバーといっても、
一番目立つのはミックで、
「ブライアンはミックにいじめられていた。ミックにクビにされた」
そして、
「ブライアンが死んでしまったのはミックのせい」
一部で、こんな心無い声があがるようになったのではないでしょうか。

「ブライアンはサイテーな奴だった。死んでくれてホッとした」

キースのブライアンに対する冷たいコメントは、
ミックへのバッシングの矛先を自分にも向けるため、とは考えられないでしょうか。

このままミックだけが責められるのは公平ではない、
ミックが責められるのなら自分も責められるべきだ、と。

ブライアンは”ミックとキース”にいじめられ、クビになって、失意の中で亡くなった。

ストーンズを責める奴らがいるなら、その責めを一人が背負うのではなく二人で背負っていこう、
キースはそんなふうに考えたからこそ、
悪役を演じ始めたのではないでしょうか。

それはミックを守るためのみならず、
ブライアンの死を忘れないため、
結果的にブライアンを追いつめて、救うことができなかった、和解するチャンスも持てずブライアンは亡くなってしまった、
その罪を忘れないようにするため。

でもですね、
これも私の勝手な解釈ですが、
ブライアンは少しもキースのことも、メンバーのことも責めてないと思います。

自分の状態が悪くて、ストーンズから切られてしまったことも、
仕方ないと受け入れていたと思うし、
切り替えて、新たな自分の音楽に取り組んでいたとも思います。

何度も言ってしまいますが、
もう少し長生きできていたら、
形は変わってもまたメンバーといい時間をまた過ごせるようになったかもね、と思います。

とにかく時間が無さ過ぎでした。

これも以前書いたことです。

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1989年1月18日、ストーンズがロックンロール・ホール・オブ・フェイムに加えられることが正式に発表された。

ミックとキースは決着をつけるため、バルバドスで会うことにした。

会ってから数分もたたないうちに彼らは互いに怒鳴りあったが、その日が終わる頃にはジャック・ダニエルを飲みながらジョイントをまわし笑いあっていた。

*******

そう、
ミックとキースがこんなふうに和解したように、
ブライアンがもっと長生きしていたら、同じような感じでいい友人に戻れていたのではないでしょうか。

性格が違う者同士、
若かったこともあって、距離の取り方がわからなかった。

近くなりすぎてぶつかりあった。

でも年月が経って年齢を重ねるうち、それぞれが相手との距離感を学べば、
ブライアンとキースもお互い、どういう距離感を持てばうまくやっていけるかがわかって、
きっと、和やかに話せる時がきたのではないかと思います。

ブライアンからいつもアドバイスされているように思うことがあります。

「生きていることを謳歌しなよ」
「生きていれば、受けてしまった誤解を解く努力もしていけるんだよ、
自己嫌悪になったって、その悪い部分を直していく努力をしていくこともできるんだよ、
気まずくなった仲を修復していくこともできるんだよ」
「自分はもう亡くなってしまったから、それができない。
なのに、何を落ち込むの? 生きていたら、どうにかしていけるのに、なんで落ち込むの? 生きているのに!」

――生きていられることの幸せを胸に、精いっぱい生きていきたいと思います。

ブライアンとキース・リチャーズのシリーズ、
すごく長引いてしまいましたが、これが最終回です。

二人の歴史にはいろいろなことがあったんですよね。

お金がなくて、寒い冬には身体を温めるため、二人でギターを弾き続け、
狭いベッドでミックと三人で寝て、
二人して悪ふざけもして、
キースのチキンをブライアンが食べちゃったなんて理由で殴られたり、
体力のないブライアンの穴を埋めるためにキースが二人分のギターを弾いたり、
アニタが間に入ってきてゴチャゴチャして、
ドラッグを一緒に楽しんだり、逮捕されたり、
「おまえ、もうクビ」って言わなくちゃならなくなったり。

もしかして元々、距離を置いて付き合ってればいい仲だったのかもしれないけれど、
この友情、
ブライアンもキースも楽しんでいたと思います。

友情は確かにあったし、
今もきっとあり続けていると思います。

さて、長くなってしまったシリーズのラストに「NO Expectations」を聴きましょう。
またまた以前書いたこと、↓

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――さて、このアルバムに収録されている「No Expectations」のギターがブライアンなのか違うのかという疑問が未だにあるようですが、前出の2003年のインタビューで、ミックは次のように答えています。

スチール・ギターが素晴らしい曲ですね、という質問に対して。
ミック「あれはブライアンがプレイしてるんだ。あの時は俺たち床に輪になって座って、歌ったりプレイしたりしてた。オープン・マイクでレコーディングしてね。俺が覚えてる限り、本当にやりがいのあることに100%マジで打ち込んでるブライアンを見たのは、あれが最後だったな。あいつがちゃんと他の奴らと一緒にいたんだから。変なことを覚えてるもんだね――でも俺が覚えてる限り、奴がそうしてる姿を見たのはあれが最後だった。あいつ、すべてに興味を失っちまってたからね」

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紹介するこの音源、
まさに輪になって演奏した、あったかい雰囲気が出ていますよね。

ストーンズの初代二人のギタリスト、ブライアンとキースの音が印象的な曲です。

コメント

  1. mutsu より:

    るか 様
    もう5年くらい前になるかも知れませんが
    「月の響きを聴きながら」ブログのジャジューカの記事にコメントして数回やりとりしていただいたものです。お尋ねしたい事があって記載されていたメルアドにメールを差し上げようとしたのですが撥ね返されてしまいました。Gmailからメールできるアドレスを僕のアドレスに送っていただけませんでしょうか?ちょっと興味深いCDを入手してご意見を伺いたいのです。よろしくお願い致します。

  2. るか。 より:

    mutsuさん
    反応遅れてしまってすみません!
    お久しぶりです。
    今、Gmailアドレスから送ってみましたが、届きましたか??