part12の続きです。
太字がキースの発言です。
書いた後で、ふと思ったのですが、part12で、
「ミックはビートルズの「sgt.pepper」に感銘を受け、ストーンズもサイケデリックなアルバムを作るべきだと主張したが、このとき、流行の風に吹かれるままにやっていきたいというミックと、バンド本来のルーツを信奉するキースの考えが対立することになった。」
というようなことを書きましたが、ブライアンは絶対的にキースの考え方に賛成だったと思うので、このあたりの音楽的な面でも、ブライアンはキースのことを信頼していたのでしょうね。
しかしミックの「流行にのる」やり方で、よくここまでバンドが長続きしているなあと思ってしまいます。
(確かミックは”コックサッカーブルース”の中でも、同じような発言をしていた)
というか、そういうやり方こそ、長く生き残っていく秘訣なのでしょうか?
常に新しいものを開拓していく、或いは自分の表現方法に固執するようなアーティストの方が、長続きはしないということ??
レッドランズの裁判が6月27日から29日にかけて行われた。
このあたり、またまたミックのブログと重なりますので、そこから引用。(今回は大部分、以前書いたことと重なりますね)
6月27日、ミックはウェスト・サセックス裁判所の証言台に立った。
80人のファンが傍聴席を埋め尽くし、何百人ものファンが裁判所のまわりに集まった。
証人のスタンレー・カドモアー部長刑事は、ミックの服のポケットから薬を4錠発見したこと、ミックがそれを自分のものだと認めたことを証言した。(実際にはその薬はマリアンヌのものだった)
陪審員は”有罪”の評決を下した。
判決は翌日のキースの裁判まで待つことになり、ミックは手錠をかけられ、リューズ刑務所へと護送された。
翌日、キースが証言台に立ち、陪審員が70分かけて出した評決は”有罪”だった。
ブロック裁判官はキースに「懲役一年、罰金500ポンド」の判決を、ミックには「三ヶ月の懲役、本裁判費用として100ポンドの支払い」を科した。
(一緒に判決を受けたロバート・フレイザーは「懲役六ヶ月、罰金200ポンド」だった)
キースとミックの金と敏腕弁護士を持ってすれば24時間のうちに釈放されるのはわかっていたが、一度は実際に監獄に入らなければいけないというのは、二人にとってかなりの打撃だった。
着飾った衣服や装身具がはぎとられ、殺虫剤がかけられ、キースは番号で呼ばれることになった。
「まず、入れられたところも着せられたものもおれにはまったく似合わなかった。もう少し広い方がよかったし、便所も別のところにあるほうがよかったし、無理やり起こされるなんて最低だった。食事はまずい、選べるワインなんてごくわずか、置いてある本とくりゃあ話にならない」
しかし囚人仲間たちは同情的で、ストーンズの曲が聞こえてくるやいなや、一斉に歓声があがった。
翌日の午後、釈放が決まると、キースはベッドから飛び起きてドアを蹴りつけた。
「ばか野郎、早く出せ! 俺は釈放されたんだ!」
一時間後、運転手付のベントレーの後部座席に座って刑務所を後にするキースの背中に、所長の声が響いた。「またここで会おうぜ、このばか野郎!」
アレン・クラインの証言。
「保釈金を払ってやつらを出してやった日には、いい加減こけにされたよ。ミックとキースとマリアンヌがホテルのおれの部屋に来たんだが、あの女、入ってくるなりマリファナの詰まったパイプを出して火をつけるんだぜ。どうして、あれほどばかができるんだ? おれはひったくって窓の外に放り投げたさ。彼女はつったったままぬかしたね。法律なんて現実的じゃないわ。だからわたし、全然気にしないの、ってね」
次の週にはロンドンのザ・タイムズに「車輪にとまった蝶を誰が叩きつぶすのか?」というキースとミックを擁護する社説が掲載され、7月12日にはアレン・ギンズバーグが「ローリング・ストーンズはイギリスの大きな文化的財産であり、監獄などに入れたりせずに、国を挙げてこれを賞賛しなくてはならない」という書簡をタイムズ宛に書いた。
ザ・フーは、ミックとキースに対する判決に抗議として、彼らの曲をレコード化する、と宣言した。
デッカのアメリカでの子会社であるロンドン・レコーズは、この一件で有名になったのをこれ幸いと、既に発売した曲や未収録の曲を寄せ集めたアルバム「Flowers」をリリースした。
7月12日から22日まで、ストーンズはオリンピック・スタジオで「Satanic Majesties」に取り組んだ。
7月22日、「Flowers」が全米ヒットチャート入りを果たし、35週間とどまるうちに最高3位まで上昇して、ストーンズにまたゴールド・ディスクをもたらすことになった。
この頃、マネージャーだったアンドリュー・オールダムがストーンズから離れていく。
ストーンズには、言葉によるコミュニケーションが存在しなかった。
ブライアンはキースに口をきかなくなっていたし、キースとミックは誰にも、特にアンドリューには何も話さなかった。
ストーンズのイメージ作りに関してアンドリューの意見を聞かなかったのは、一種のクーデターだったとも言われている。
イアン・スチュワートは語る。
「おれたちは集合すると、ブルースをわざとへたくそに何曲も演奏した。とうとうオールダムは出て行ったよ」
7月31日、英国首席裁判官パーカー卿はミックの懲役刑を破棄して、一年間の保護観察処分を言い渡した。
キースへの判決は破棄された。
キースは残った夏をアニタと共に、ローマで過ごした。
アニタの影響はすぐにキースにあらわれた。キースはアニタのスカーフやブラウス、ジャケット、宝石類を身につけるようになった。
アニタはキースに目の下には黒い墨を入れ、口紅やマニキュアをするよう勧めた。
アニタは、
「キースは女たらしなんかじゃなかった。つまり、女は一人でいいっていう主義なのよ。いつもわたしにはとっても誠実だった」
と言う。
ミックはビートルズに合流して、インド人の導師マハリシ・マヘシ・ヨギに会いに出かけていたが、キースには興味がないことだった。
(ミックのブログには、実はミックもマハリシには興味がなかったと書いたのですが)
再びアニタの証言。
「あの頃のイギリスで流行っていたサイケデリックなものなんて、正直言って、どれもこれも最低。あの導師だって、ヨークシャー出のまがいものよ。ブライアンはほかのメンバーが何をしているか知ろうともしなかった。スタジオでも、妙な楽器ばかり弾いて。あの頃のブライアンはスタジオにいると、いつも誰かにべたべたくっつこうとしていた……ブライアンは当時のロンドンの音楽のトレンドなんか嫌いで、ますますめちゃくちゃになるばかりだった。もう彼は誰とも演奏ができなくなっていたわ」
8月18日、ファンの支援に感謝するレコード「We Love You」をリリースしたが、大ヒットにはならなかった。
10月30日、ブライアンとプリンセス・スタニスラス・クロソウスキー・ド・ロウラ(スタッシュ)はインナー・ロンドン裁判所に出廷した。
シートン判事はブライアンに、彼のフラットをカナビス吸飲の目的のために使用許可したことに対して「9ヶ月の禁固刑」、及びカナビス所持に関して「3ヶ月の禁固刑」を言い渡した。また起訴費用として、250ギニーの支払を命じられた。
(あれ? 前に書いたのと刑が違う……。ビルの著書を確認したところ、カナビスを吸う目的で自宅フラットを使わせた罪で9ヶ月の懲役刑、カナビスを所持していたことについては、それと同時に発効する3ヶ月の実刑と、裁判費用として265ポンド10シリングの支払を命じられた、とあります。)
ブライアンはワーム・ウッド・スクラブス刑務所に向かった。
翌日の夜、750ポンドの保釈金で、ブライアンは上告の間、解放された。
12月12日、ブライアンは上告裁判所でパーカー卿の前に出廷した。
パーカー卿は禁固刑を退け、ブライアンに1000ポンドの罰金と3年間の条件付保護観察を言い渡した。条件というのは、フラッド医師の指導の下、精神治療を受け続けるというものだった。
パーカー卿はブライアンに言った。
「覚えておいて欲しい、これが裁判所の示す慈悲の心だということを。無罪放免というわけではないのだから、これを鼻にかけたり自慢して話したりしてはいけません。あなたはまだ裁判所のコントロール下にあるのだからね。もし保護監察官やフラッド医師への協力を怠ったり、他の罪を犯した時には連れ戻されて、この件に関して再び罰を受けることになります。それがどの程度の処罰になるかはわかりかねます」
記者会見はキャンセルされ、スポークスマンが声明を発表した。
ブライアンは判事の言葉にとても気を遣いながら、「自由を得られて本当に嬉しい」と発言。
ミックが「彼が自由になって俺たち全員大喜びだ。今の望みは早くこのことを過去のこととして、ハードな仕事に戻ることさ」と付け加えた。
12月15日、「Their Satanic Majesties Request」がリリースされた。
イギリスではヒットチャートの第三位、全米では第二位まで上昇した。
大方の意見は批判的だったが、キースの作曲とギター演奏の広さには賞賛が贈られた。
ある評論家は、
「”Lantern”でのキースのギターはアルバム中屈指の演奏だ」
と言った。
キース自身は、
「あのアルバムは駄作の寄せ集め」
更に、
「あのアルバムを持ってしても、おれはサイケデリック・ミュージックには熱くなれなかった」
と語った。
――あれれ?
このアルバムに対してのブライアンの貢献度は高かったと思うのですが、キースの作曲と演奏に賞賛が贈られただけ?
と思っていたら、11月30日に出演したラジオ番組「トップ・ギア」(ミック、ブライアン、チャーリーが出演)で、ミックが、
「ブライアンがほとんどすべての楽器を演奏している」
と語っていたそうです。
ミックは後年、ブライアンのマルチプレイヤーぶりを認めている発言もしています。
「あれだけの楽器を演奏できるプレイヤーを揃えるとしたら、多大な費用がかかってしまう」と。
ミックもキースも、そしてブライアンだって、本気で相手を排斥したいと思っていたわけではないということだと思います。
ただ、それぞれが心にゆとりがなかったのでしょう。
後日に続きます。