ブライアン・ジョーンズな日々 part4

part3のラストで、「私はブライアンについて、まだまだ全然わかっていなかったのだと思いました。」と書きました。

メンバーであったビル・ワイマンが書いた「ストーン・アローン」を読み、今まで知らなかったことを知り、そしてそれらをつなぎ合わせていって、いろいろな謎が解けたような気がしたのです。

私の解釈が当たっているかどうかはわかりませんが、生前のブライアンがどんな状態であったのか、私なりに感じ取ったことを綴ってみたいと思います。

スポンサーリンク

ビルの本は他のどの著書よりも信頼できると思った

ビルが書いたことはブライアンの全てではないと思います。

どんなに近くにいたって、他人のことを100%完全に理解することは不可能だからです。

それでもビルが書いたこの本は、他のどの著書よりも信頼できると思ったのは、彼が冷静で、情に流されて感傷的になりすぎることのない人間であると思えるからです。

彼は自分勝手に事実に解釈をつけて書いてはおらず、あったことをありのままに書いています。

そしてブライアンと共にストーンズのメンバーであることから、バンド内での人間模様についても、自分の目で見たままのことを書いています。

というわけで、「ストーン・アローン」を読み終えた私が感じ取った、生前のブライアンについて書いてみます。
(文中の引用は全て「ストーン・アローン」からのものです)

ブライアンを理解する上で不可欠なこと

「ストーン・アローン」を読んで一番強く思ったのは、
ブライアンを理解しようとする上で、基本的に考慮しなくてはいけないのは、彼の健康状態であるということだ。

ブライアンは喘息もちだった。

いつ起こるかわからない発作におびえ、常に吸入器を持ち歩いていた。

その上、ブライアンは喘息の治療のための薬にもアレルギーを起こすことがあった。

発作への恐怖というものは健康な人間には、きっと想像してもわからないのだと思う。

健康な人間でさえきつかったストーンズの活動は、ブライアンには大きな負担になっていたのだ。

喘息のブライアンは、ステージでの仕事がつらそうだった。
しかし彼は名声を愛していたので、プレッシャーを感じていた。
発作はいつ起こるかわからない。それでいつも吸入器を持ち歩いていた。
演奏をして精神的に消耗すると、最後には危険なほど疲れた様子をしていた。
たぶんそういう内的な緊張と演奏中に発作が起こる不安のせいだろう、
彼はおれたち5人の中で一番笑いの少ない傲慢なイメージを持たれていた。
それがかえって、女の子には魅力的に見えていた。

(私が持っているDVDの映像で、演奏中のブライアンがいつもと違う(苦しげな)様子に見えるものがある。
もしかして、このときの彼は体調が悪かったのかもしれない。)

それに加えて、この本を読んで初めて知ったことだが、ブライアンにはもう1つ持病があったのではないかというのだ。

喘息以外の持病

彼には少なくとも私生児が5人いる。

16歳か17歳の頃、14歳のガールフレンドとの間に産まれた子供。

パット・アンドリュースとの間に産まれた子供。

リンダ・ローレンスとの間に産まれた子供。

ドーン・マロイとの間に産まれた子供。

そして、1960年8月4日に産まれた(ブライアンがその存在を知らなかった)娘。

この1960年に産まれた娘が、ブライアンと薄気味悪いほど似た振る舞いをする健康状態にあったというのだ。

彼女が苦しんでいた症状は「側頭葉癇癪」と、本には書かれている。

側頭葉癇癪(側頭葉てんかん)

側頭葉癇癪(側頭葉てんかん)について、少し調べてみた。

側頭葉てんかんの複雑部分発作というのは、いわゆる痙攣を起こすようなものではなく、まわりからは(本人にすら)わかりにくいが、生命の危険性を伴うきわめて恐ろしいものらしい。

以下、発作の特徴。
・動作が停止し一点を凝視する。
・患者はこの発作の内容を全く記憶していない。
・発作の最中には、完全に周囲の世界と感覚が遮断される。
・発作の前触れとして、こみ上げるような不快感、気が遠くなりそうな感じ、恐怖感などがある場合もあるが、中には全く前兆がないケースもあり、この場合患者は、発作が起きたことすら気付かない。
・実際に患者が自覚しているより発作頻度が高い。
発作の最中には周囲の世界と感覚が遮断される(つまり意識がなくなる?)状態になるため、熱湯に手をつけても、熱したアイロンを触っても気がつかない。お風呂の中で発作が起きると、そのまま湯水を飲み続ける危険性もある。

そして側頭葉てんかんのもう一つの特徴は、性格変化

一般的には、発作が近づくと攻撃性が増し、発作で発散してしまうと、また安定した感情に戻る。

ブライアンの娘やビルの証言

ブライアンの娘は語る。

「ブライアンは自分がどこにいるのかわからなかったとある人がいうのを読んだことがあるんだけれど、
それはわたしが苦しんでいる癇癪の症状と一致するわ。
自分が行くところなのか帰ってくるところなのか、過去にいるのか、現在、未来なのか本当にわからないの。
記憶を冒されるのよ。
頭がごちゃごちゃしているの」
「発作が起こると、わたしはすぐ虚脱状態になるの。兆候なんてないのよ」
「彼が発作を起こしていてまわりの誰も気がつかなかったとしたら、ひどい話だわ。
本当に気分が悪くなるのよ。何が何だかわからなくなるの。まともな会話が続けられなくなるのよ。頭に突然どしんと来て、だめになってしまうの」

ビルは思い起こしている。

(ブライアンは)たしかに突然憂鬱になり、気分がしょっちゅう変わっていた。
一瞬まともに戻り、また会話が途切れることがあった。

ブライアンはこのような症状に悩んでいたのではないだろうか。

もちろん自分の健康状態はまわりの誰よりもわかっていただろうとは思うが、きちんとした診断と治療を受けていたのだろうか。

身体が弱かったブライアンは他のメンバーとは違い、何度も病気になり、医者にかかっている。

自分はどうもおかしい、喘息の他にどこか悪いのではないかと不安に感じていたのではないだろうか。

よく医者に行っていたブライアンは「神経性疲労」だと診断された、と言っていたそうだ。

発作の自覚症状がなく、
「気分の浮き沈みが激しい」「時々頭がボーっとしてわけがわからなくなる」「記憶が途切れる」などの症状を医者に説明していたとしたら、もしかして医者側は深く考えず「神経性疲労」と診断したかもしれない。

急に意識を失うことがよくあった

ブライアンにはこの持病があったのではないかと思われる記述は、他にもある。

恋人のスキとモロッコに行ったとき、突然ホテルのバルコニーで気を失ったのだ。

その場にいた人間は驚いたが、スキは、
いつものことなの。しばらく眠ればブライアンは元に戻るのよ
と言った。

ブライアンはぐっすり眠り、後で目が覚めたときには、何が起きたのかまるで覚えていなかった、そうだ。

私は他の本でブライアンのこのような行いを読んだ時、ドラッグの影響か、性格の問題だと思っていた。

たぶん彼のまわりにいた多くの人たちも、そう考えていたのではないだろうか。

でも、そうではないとしたら?

彼には「側頭葉癇癪」という持病があったのだとしたら?

ブライアンの死後(プールでの溺死)、以前の恋人だったアニタは発言している。

「彼は前にもそういう状態になったことが何度もあったわ。でもその頃は、彼のそばにいて、世話をしてあげられる者がいつも誰かいた」

彼はプールで側頭葉てんかんの発作に襲われたのだろうか。

そして意識を失い、プールの水を飲み続けてしまったのだろうか。

すみません、長くなりそうなので、また後日、続きを書きます<(_ _)>