前回書いたように、
「ブライアン期以降のストーンズからもブライアンを感じられるのなら、その後のストーンズにも興味を持って知るようにしよう」
と思った私は、「GIMME SHELTER」をレンタルして観てみた。
これは有名な「オルタモントの悲劇」と言われるコンサートのドキュメンタリー。
1969年12月6日、カリフォルニア州オルタモントでのフリーコンサートの様子を、その他の映像と交えて描いている。
このコンサートの計画に、占星術師、心霊研究家、魔術師たちは全員反対したそうだ。
反対の理由。↓(サンチェスの著書による)
・太陽、金星、水星がみんな射手座にある。
・新月が天秤座とさそり座に出ている。
またオカルト信者は、
「ストーンズは不吉な日を選んだばかりでなく、破壊を目的としたストック・カー・レース場を会場に選んでいる。そして、この世で最も凶暴な悪魔にとりつかれた集団ヘルズ・エンジェルズを雇っている」
と不満をもらした。
その不吉な助言?が当たったのか、コンサートは大変な悲劇となってしまう。
当日の演奏の順番。
**以下、「Rollong with the stones」より引用**
サンタナ、ジェファーソン・エアプレイン、フライング・ブリトー・ブラザーズ、クロスビー・スティルズ・ナッシュ&・ヤング、ローリング・ストーンズ。
(コンサートは午前10時から始まる予定だったが、午後1時になるまでサンタナの演奏は始まらなかった)
カルロス・サンタナ曰く、
「最初からイヤな雰囲気があった。ヘルズ・エンジェルズが観客を暴力的に扱っていたからケンカが始まった。だれもヘルズ・エンジェルズを怒らせるようなことはなく、ヘルズ・エンジェルズが最初に手を出したんだ。ヘルズ・エンジェルズの1人がナイフを持って人を刺そうとしている姿がステージから見えたよ」
そして、オルタモントでのコンサートの統計。↓
- 観客人数 50万人
- メレディス・ハンター死亡。(乱闘に巻き込まれ、殺される)
- LSDをきめていた男性が用水路に落ちて溺死。
- 男性2名がたき火をしながら道端に座っていたところをひき逃げされて死亡。
- 男性1名がフリーウェイの高架式交差路から飛び越えて(飛び降りて?)、両足と骨盤の骨折。
- 2児誕生。
- 40万ドル分の損害が発生。
このフィルムは、ストーンズの演奏を楽しめるというものではなく、混乱したコンサート会場の様子を映し出したもの。
内容については、ご存知の方も多いと思いますので、敢えて細かく語るのはやめておこうと思います。
とにかく、ひどいです。
恋人を連れて、コンサートを楽しみにきた何の罪もない18歳の黒人男性が刺され、蹴られて、殺されてしまうのですから。
こんな悲劇ってあるでしょうか。
このフィルムを観たら、「集団心理って怖い」って改めて思ってしまい、そして(恐怖のレベルは違いますが)同じように集団心理を怖いと思ったある出来事を思い出しました。
当時書いた文章が残っていましたので、少し書き直して、紹介します。
2002年、日本でW杯が開催されたときのことです。
もうひとつのW杯(怒れるサポーター) 2002年6月10日
昨日の「日本vsロシア」、チケットが手に入らなかった私は、パブリックビューイング(競技場にてオーロラビジョンで観戦)に行くことを思いつく。 多くの人たちと一緒に観戦できた方が、絶対盛り上がって楽しいに違いない!、と思ったから。 私が応援しているJリーグ浦和レッズのホームグラウンド(当時は駒場スタジアム)でパブリックビューイングが開催されるという情報を入手。 先着15000人、入場無料。 私は前日にレプリカ(ユニフォーム)とタオルマフラーを買い、準備万端。 PM8:30の試合開始にPM2:00開場。 整理券が配られるという。 当日朝、徹夜組もかなり出ているという情報が入る。 早く行かなくちゃ、定員いっぱいで入れなくなっちゃうよ!!と、大急ぎで競技場へ。 AM11:30に着いた時には既に長蛇の列。 炎天下のもと、競技場となりの金網に囲われたサブグラウンドで並んで待つ。 PM1:30頃、アナウンスが入る。 「整理券を配ります。受付に並んでください・・・」 並んでいた人たちは、当然先に並んでいた人から誘導されるものと思っていた。 が、係員は見当たらず、誘導もなく、先程のアナウンスが繰り返されるのみ。 混乱が始まった。 「受付ってどこ!?」「並ぶってどこに!?」 整理券がなければ入場できないとわかっているので、みんな殺気立ってくる。 列はぐちゃぐちゃになり、みんながサブグラウンドの出口に殺到した。 狭い出口は大混乱で、押し合い圧し合い、悲鳴、将棋倒しになりそうな危険な状態。 実際怪我人も出たそうだ。 出口を失い、金網(高さ3mはありそうな)をよじ登る人たち、「ここから出せーっ」と、金網を揺さぶりながら叫ぶ人たち・・・ 「子供が転んでるんですっ」 転んでしまった子供を踏み潰されないようにと、叫ぶお母さんたち。 やっとの思いで外に出たものの、またしても大混乱。 女性係員が「ここから出ないでください!」と注意しているところを強行突破する人々。 押されて倒されそうになる。 私たちもどうにかその混乱を抜け、整理券配布場所へ。 ところが、そこも大混乱。 1人1枚の整理券のはずなのに、混乱に乗じて、何枚も係員から奪い取る人たち。 係員も押されてキズだらけだったそうだ。 泣いている人、叫ぶ人、怒る人・・・・ 「なんなの、これ・・・いったい、どうなってるの・・・」 ただ呆然。。。 どうにか整理券をもらい、中に入る。 座席は自由席。席を確保して、ホッとひと安心・・・・ ところが、ひと安心も束の間。 周りは異常な盛り上がりの人たちでいっぱい。 もちろん、純粋にサッカー観戦を楽しみに来ている方もいましたが、多くはただ騒ぎたいためだけに来ているような人たち。 若い男の子が多かった。(くされヤンキーなんて表現している人も・・^^;) 缶の持ち込みは禁止のはずなのに平気で持ち込んでるし、大騒ぎでビールのイッキ飲みを始めるし。。 飲み終わったカップはグラウンド内に投げ込まれ、足元もゴミが散乱している。 水が撒き散らされ、飛んでくる。 芝の上で花火をしている人たちもいたそうだ。(大切な芝になにすんだーーーっ 怒!) 爆竹の音が鳴り響き、火薬のにおいが立ち込める。 グラウンド内に乱入する人たちの数も半端じゃないくらい多かった。(大切な芝を踏み荒らすなんて!) 警備員との追いかけっこを楽しんでいるような様子。怒! アナウンスはしきりに、「マナーを守りましょう!」と繰り返している。 試合がオーロラ・ビジョンに映され始める。 座席の上に乗るなと言われているのに、周りの人、ほとんど座席の上でぼんぼん跳ねている。 後ろの人が見えないよ! キレそうになりながら、人の隙間から必死に画面を見る。 自分たちの大切なホームグラウンドを汚されたと感じたレッズサポは少なくなかった。(私もその一人) 悔しい。悲しい。憤る。 試合終了後、勝利の余韻を味わう間もなく、混乱を避けるために早々に競技場から脱出。 勝利の喜びよりも、あまりのひどい状態に気分が悪くなる。 頭痛がひどく、喜びもかき消されてしまっていた。 |
当時も思いましたが、この混乱の原因はやはり主催者側の誘導ミスだと思います。
「整理券を配ります」
のアナウンスの後、
「先頭から順番に入場していますので、列を崩さずお待ちください」
と続いたなら、あんな混乱は起こらなかったでしょう。
もちろんマナーを守るという、一人一人の意識が大切だとは思いますが。
大勢の人間が、マナーを守らず興奮して動き始めると恐ろしいことになる……、「集団心理って怖い」って思った出来事でした。