「A Degree Of Murder」ミュージック by ブライアン・ジョーンズ

ブライアン・ジョーンズが音楽を担当したという最愛の恋人アニタ・パレンバーグ主演の「A Degree Of Murder」の幻のCDを入手!

決してきれいな音とは言えず、音楽の上から台詞がかぶっているような状態なのですが、聴けないと思っていたので、う、嬉しい!

ブライアンの世界にどっぷり浸れる!

ブライアン・ジョーンズは作曲は出来なかったと言われている。

映画音楽を担当したという事実もあるのになんで?と、思っていた。

周りの人たちだって、彼が映画音楽を担当したことは知っていたはずなのに。……謎ですね。

この映画音楽の中でブライアンは、シタール、オルガン、ダルシマー、リコーダー、クラリネット、ハープシコード、ハーモニカ(フルート、バイオリン、バンジョー、サックスも?)を演奏し、そしてボーカルも入っている。

しかし、そのボーカルに映画の台詞がかぶっていて、よく聴こえなかったりする;
つい、
「ちょっと台詞、黙ってて!」
って思ってしまう。

でも、きちんとしたサントラじゃないからこそからかもしれないけれど、ブライアンの音楽がとっても身近に感じられる。

とりあえず録音してきた音を、
「これ、俺が作ったんだけど、聴いてくれる?」
って、持ってきてくれたような。

それで聴いてみたら、きれいに録音されてなくて聴きづらくて、
「台詞とか、かぶっちゃってるじゃん」
って言うと、
「仕方ないよ、スタジオで自分の機器でとりあえず録音してきた生の音なんだから」
っていう会話がなりたっちゃいそうな感じ。

いろいろな楽器を一生懸命演奏している想いが伝わってきた。(彼のアニタへの想い、なのかもしれませんが)

私は文章であれ、絵画であれ、なにか他の創作物であれ、その人が作り出すものにはその人自身が反映されると思うのですが、今回、このCDを聴いて、
「音楽にも人柄は出るんだ」
とあらためて思った。

なんか、とっても、
「あー、これはブライアンだ!」
って感じたのだ。

というより、本人に会ったことがないのだから、彼が作った音を聴いて、
「こういう人だったんだ」
って納得したというほうが正しいかも。

どう感じたかというと、
「荒っぽくて攻撃的な感じなんだけど、その実、陽気でやさしくて、繊細」

この映画が公開されたのは67年らしいんですが、その年にブライアンとアニタは別れているはず。

モロッコ旅行中に、ブライアン1人を残して、ストーンズのメンバーであるキースと逃げてしまったというのが67年だった。

その件以来、キースとは口もきかない状態がしばらく続いたらしいが、同じ頃、TV番組でキースと仲良さそうに演奏している映像が残っている。

その同じ67年にストーンズは「サタニック・マジェスティーズ」というアルバムを発表しているが、ブライアンはそのアルバムの製作に大反対をしている。(が、多数決でブライアンの意見は通らず、そのアルバムは製作される)

「ストーンズはR&Bでいくべきだ」と言っているにも関わらず、やはり同じ頃、「今は電子音楽に夢中」だと発言している。

この一貫性のなさはなに?

このあたりの流れはどうなってるのだろうと思い、ちょっと整理してみたところ、たぶん↓のようだ。

66年    映画音楽を録音。
67年1月  エド・サリバンショーに出演。(キースと仲良さそうな様子)
67年3月  モロッコに1人置き去り事件。(アニタと別れ、キースとの仲も最悪に)
67年11月 アルバム「サタニック・マジェスティーズ」発売。
67年    「電子音楽に夢中」と発言。

つまり映画音楽を作っている時には、まだアニタとは別れていず、TV番組収録の時には、まだキースに対しての怒りもなかったってことですね。

「サタニック・マジェスティーズ」に反対したのも、たぶん、当時のビートルズ「サージェント・ペッパーズ…」の物まね風アルバムになることがイヤだったってことだけなのかもしれない。

でもその反対したアルバムで、ブライアンは様々な楽器を操り、大活躍することになるわけですが。

「R&Bだ!」→「電子音楽に夢中」という流れも、別に一貫性がないというわけではなく、彼の中では自然の流れだったのかもしれません。
(いえ、正直なところ、音楽的なことは私にはよくわかりません…;)

※その後の追記
このブログを書いた当時は、ブライアンは電子音楽に目覚めたのだと思っていましたが、どうやらブライアンはずっとブルースに夢中だったようです。

ちなみに67年1月15日の「エド・サリバンショー」です↓
「ruby thuesday」でリコーダーを、「let’s spend the night together」でピアノを弾いているのがブライアンです。

ブロンドにグリーンのシャツが映えてカッコいいです。

「let’s spend the night together」は、エド・サリバンに問題になっている歌詞を歌ってはならないと言われて、「let’s spend some time together」と紹介され、ミックも歌詞を換えて歌っています。

更にちなみに、ブライアンのボーカルについてですが、PSYCHIC TVの「GODSTAR」というアルバムで聴くことが出来ます。

ジミヘンと発表しようとしていたデモテープが残っていたらしく(?)、ブライアンはボーカルとシタールを担当しています。

実際に演奏して歌っているところ、観たかったです。

→その後、ブライアンがボーカルではないという話が浮上。コチラ

最後に、
ブライアンの繊細なのに攻撃的な性格のルーツを考えると、やはり家庭環境にあったのかもと思えます。

親と子、お互いにお互いを思っているようでありながら、どこかズレてるのです。

ブライアンの死後、ブライアンの父親が、

 「私にとって音楽はあの子から仕事を奪い去る絶対的な悪でした。音楽があったからこそ、あの子は地道な職に就こうとしなかったんです。」

と語っている。(「悪魔と踊れ」 スタンリー・ブース著 より)

この言葉が本当だったとすると、哀しくなる。

だって、ブライアンにとって音楽っていうのは自分のアイデンティティーといえるくらい自分を表現できる最大限の大切なものだった。

自分=音楽といっても過言ではないほどに。

それなのに、「音楽は悪」と親に言われてしまうなんて。

わかってあげてよ、認めてあげて、と思う。

――というわけで、今宵も彼の音楽に心を躍らせながら至福のときを過ごしましょう……